「すし独楽」
店主 柳原 雅彦 氏「ル・コルドン・ブルー日本校」
マスターシェフ ドミニク・コルビ氏

高知県産の食材を、和と洋の料理人はそれぞれどのように解釈し、どんな料理に仕立てるのか…
和食とフレンチを代表する2名の料理人が競演し、観客の目の前で調理を実演しながら
高知県産食材の魅力を語るイベント『食の力・町の魅力 ~ 和食&フレンチの饗宴』が、
2014年11月29日、東京・渋谷区の「ル・コルドンブルー代官山校」で開催されました。

最初に登場したのは、東京・世田谷区の「すし独楽」店主・柳原雅彦さん。寿司はもちろんのこと、四季折々の食材に繊細な技をほどこした一品料理や、旬の野菜を用いた料理も人気の寿司店です。
「高知県の野菜はショウガやユズ、ミョウガなど薬味になる香味野菜が揃っており、ナスやトマトなどの夏野菜も年間を通じておいしいのが魅力です。今日はナスを使った前菜的な二品と、トマトを使った寿司を披露します」と、柳原さん。

「よせ茄子 おぼろ豆腐がけ」は、揚げたナスをサッと煮て、煮汁をゼラチンで固め煮こごりにしています。ナスと油の相性は抜群ですから、揚げることで風味の増したナスを煮汁ごと、美味しさ共々閉じこめているのです。

「その上におぼろ豆腐をかけていますが、中には高知県産のショウガ、ミョウガ、やっこねぎ(小ねぎ)を刻んで加えています。実は豆腐もナスとの相性は抜群なんです。

薬味を裸のまま上に載せるのではなく、豆腐をかけ衣にしています。こうすることで、美味しさや色味はもちろん、料理としての華やかさも増します。基本はまず、ナスの良さを引き出すこと。そして、それに合ったものを和えていくという考え方ですね」と説明して下さいました。

「ゆで茄子のかやく和え 柚子風味ダレがけ」は、ゆでたナスを、玉ねぎ、ショウガ、ミョウガ、ザーサイを細かく刻んだかやくと和えて、ユズで作ったポン酢をかけた料理。

「ショウガ、ミョウガ、ユズとふんだんに高知県の薬味を使っていますが、ナスはこれら薬味ともの凄くよく合うのです。今日は今まさに旬を迎えている高知県産ユズを活かしポン酢にしましたが、夏場であれば、長ナスの上にかやくをたっぷり乗せ、ガブリとかぶりつく食べ方もおススメです。

その際、ナスは塩もみしてから乗せるのがポイントです。そうするとナスから水分が出るから、余分な水分を取った上で、薬味の風味を薄めることなく、それぞれの旨さ、味わいをしっかり楽しむことができます」(柳原さん)

異なる調理方法によるナスの味わいの違いと、香味野菜のアレンジの妙を楽しめる二皿です。

三品目は「ブリとトマトのちらし寿司」。トマト、ショウガ、ブリを1.5cm角のさいの目に切り、ショウガ醤油で下味をつけた後、寿司飯の上にのせます。

「本来、寿司に水気は禁物ですが、下味をつける間に出てくるトマトの水分もおいしいので、そのつけ汁も丸ごと生かして『サラサラといただけるお寿司』という新提案を行いたいと思います」と、柳原さんは料理の意図を語ります。

実際に試食してみると、トマトの酸味がシャリによく合い、 ショウガも効いた、爽やかなちらし寿司に。

家庭で作る場合は、トマトとキュウリをメインにしたサラダ感覚のちらし寿司に仕立てるのもよさそうです。 「ショウガを加えることで、トマトとキュウリ、ブリがひとつの味にまとまるのです。高知の魚といえばカツオがまず頭に浮かびます。今日は、カツオにしようと思っていたのですが、手に入らなかったのでブリにしました(笑) ブリはややクセのある魚ですが、ブリに負けないほど、高知県産の「ピュアトマト」は味が濃いですね」(柳原さん)

まさに野菜が主役のちらし寿司でした。

「ブリとトマトのちらし寿司」 トマトを湯むきして、1.5cm の角切りにする。
 同様にキュウリとブリも 1.5cm の角切りに。 醤油におろし生姜を交ぜて、①を合わせて 3~5分置く。 酢めしの上に海苔を敷き、②を乗せる。
 さらに刻んだニラ&ぶつ切りのカイワレを乗せて出来上がり最初にトマトとキュウリ、ブリを同じ大きさに切るのが、実は美味しさに影響します。
そうすることでそれぞれの食感の違いがハッキリ分かるのです。
いろんな食べ方があって良いですが、例えばペーストなどにすると風味はあっても、
食材自体の味わい、素材の良さは失われてしまいます。

手のこんだものを目指さなくてもOK。ササッと出来て美味しく楽しめればベターですから。
料理は「引き算」が大事です!

続いて登場したのは、ル・コルドンブルー日本校のマスターシェフ、ドミニク・コルビさん。
フランス料理のシェフとして同校で教鞭をとるとともに、日本在住歴20年を数え、日本各地の食材や伝統料理に関しても深い知識をお持ちです。

コルビさんは、高知県産の食肉を用いたメイン料理二品をプレゼンテーション。いずれも「今回用意された高知県産の食材を試食してひらめいた、今日初めて作る料理」だといいます。

一品目は、「ユズとショウガでマリネをしたはちきん地鶏の蒸し料理 ~スイカのジュレ、キャビア・ド・オベルジーヌ、高知県のトマトを添えて」

使用した鶏肉は「土佐はちきん地鶏」。 日本鶏の主要34品種のうち高知県原産の鶏種が全国最多8品種を占め、観賞用の鶏の生産も盛んな"鶏大国・土佐"が、満を持して独自開発したブランド地鶏です。

軽く塩コショウした「土佐はちきん地鶏」の胸肉に、刻んだミョウガとショウガ、ユズの皮と果汁をかけて、ラップをして7~8分蒸します。その蒸し汁にオリーブオイルと酢を加えて、ビグネットソースに。 付け合わせは、ナスをペースト状にした「キャビア・ド・オベルジーヌ」と、メロン果汁を寒天で固めたメロンのジュレ、そしてスイカのロースト。


油をしいたフライパンにスイカを入れるコルビさんの様子に、 会場からは驚きの声が上がります。

「スイカはデザートだけじゃない。食材がおいしければ、何にでも使えます。スイカのローストは、フォアグラにも合いますよ」と、笑顔で語るコルビさん。

実際に試食すると、焼いてもスイカの歯ざわりとジューシーさが残っており、肉料理とよく合います。「土佐はちきん地鶏」のしっかりとした肉質と旨みも印象的。鶏肉臭や雑味の少ない地鶏だからこそ、蒸し汁をそのままソースにアレンジできたと言えるでしょう。

続く二品目は、
「菜の花マスタードでパネした『土佐あかうし』のロースト、四万十川の出汁醤油を加えた牛肉のソース、高知県の野菜を添えて」

「土佐あかうし」は、高知県のみで飼育されている褐色和種の和牛(日本固有の肉用牛)。国内で生産されている和牛のわずか0.02%と、たいへん貴重な和牛です。

「この料理を食べると『肉の味がする』という表現の意味がわかると思います」と、コルビさんも太鼓判を押します。

「土佐あかうし」の塊肉に塩とコショウを振り、フライパンで焼き目をつけた後、オーブンで丸ごとローストに。ローストの際に出た肉汁は、そのまま煮詰めてソースにします。

「おいしい食材を使うと、食材から出たものだけでおいしいソースができる。この肉汁には醤油を加えていないけれど、なぜか醤油っぽい味がするのです」とコルビさん。

味見をした柳原さんも「確かに醤油のような味がします」とうなずきます。焼き上がった牛肉をホイルで寝かせる間に、付け合わせを調理。

小ナスとシシトウは揚げて、キュウリは軽く熱を加えました。 こうして完成した料理は、噛み締めるほどに「土佐あかうし」の赤身の旨みを堪能できる迫力満点の一皿に。

会の冒頭には、高知県園芸連の山下文広部長がご挨拶。 「今回のイベントは、行政と園芸連がタッグを組み、築地市場の協力を得て実現しました。 高知県産食材の魅力発信と、販路開拓へとつなげていきたいと考えています」と、趣旨を説明。

「高知県の農業産出額は年間約960億円。その4分の3を野菜や果物、花き類が占め、温暖な気候と日照時間の長さを生かした野菜や果物づくりを得意としています。

高知県から全国に出荷される野菜は約90種類、果物は約40種類。生産量全国1位の品目としては、ナス、シシトウ、ショウガ、ニラ、ユズ、土佐文旦などがあります。 農薬を極力使用しない『エコシステム栽培』に取り組むなど、味はもちろん安全性にも配慮しています」と、高知県産野菜と果物の魅力をアピール。

「和食とフランス料理という、ともにユネスコ無形文化遺産の料理のプロが、高知県産食材をどのように料理していただけるのか、私自身もとても楽しみです」と、熱い期待を寄せて下さいました。

会場には、新聞・TVをはじめとする各メデイア、飲食業界関係の雑誌編集者、
さらにはフリーランス・ライターやベジタブルマイスターまで、
多種多様な方々が参集。食材の魅力や調理のコツを聞けただけでなく、
しっかりとその試食にもありつけるなど、大変楽しい時間となったようです。
会終了後、参加者からはこんな声が寄せられました。

「和食とフランス料理では、包丁の使い方から食材のアレンジ方法まで全然違いますね。料理法は違っても『食材を生かす』という点では共通していたように感じます。高知県産の食材は、野菜も肉も素材本来の味が濃くておいしい。プロの料理実演ライブで同一産地の食材の魅力をアピールする、というイベントの趣向も興味深かったです」 (雑誌編集者)「美味しい和食とフレンチが目の前で料理され、盛り付けられていく様に見とれてしまい、アッという間の2時間を堪能しました。どちらの料理も野菜がふんだんに用いられていて、シンプルな味付けだったので、自分流にアレンジして試してみたいと思います。高知産の新生姜とミョウガは日常的に愛用してきましたが、これからは意識的に購入しようと思っています」 (「築地市場ドットコム 会員様」)高知県&築地市場、行政&園芸連、和食&フレンチ、卸会社&量販店、etc...
ふだんの業種・業態の垣根を越えて、タッグを組むことで、より一層の効果・広がりを生みだそう。
産地や流通関係社はもとより、シェフや一般利用者にももっと元気になってもらおう…

そんな狙いから始まった今回の取り組み。
これからの高知県、そして築地市場との連携が、ますます楽しみです。ご注目ください!!