コルビシェフ(以下、シェフ): 私は今回、2日前から高知に入っていろんな産地や食材を見て回ったのですが、どこを訪れてもその個性際立った野菜、その美味しさ、そして生産者のこだわりぶりには目を瞠るものがありました。

なかでも、高知県は「トマト王国」というだけあってとても強く印象に残りました。そこで、まず1品目は「冷製のスープ」です。

これはフランスやスペインではガスパッチョといって非常に親しまれているものですが、ここにはベースであるトマトだけでなく、土佐文旦、ユズ、生姜、みょうが、ししとう、ピーマン、小ネギ、そしてメロンも入っています。まずは1口、スープだけで味わってみて下さい。

尾﨑県知事(以下、知事): これは凄い!おいしい。

シェフ: トマトや文旦の甘みと酸味だけでなく、ちょっと上に唐辛子をかけて辛味を加えていますが、それ以外は純粋に野菜と果物の味をそのまま引き出しています。

弘田会長(以下、会長): これ全て高知県の食材だけで作っているんですか?

シェフ: はい、唐辛子だけは持参したフランスのエスプレット産を使いましたが、それ以外は、水の一滴さえも加えず、全て高知県の野菜と果物だけです。素材からでるジュースとそれ自体のおいしさそのものです。

そのスープを味わったら、次に上に乗せている「土佐あかうし」も食べてみて下さい。これをソースと一緒に召し上がっていただくと、先ほどの味とまたガラリと変わってくると思うんです。

知事:なるほど、これまた素晴らしい!ものすごくコクがあって、赤牛も旨味が濃くて。この一皿には、いろんな味がありますよね。甘みがあれば、酸味もあって、旨味もあるし、少しだけ苦味もあって…

シェフ: 基本的にフランス料理は、5つの味(甘み、酸味、塩味、苦味、旨味)があればベストと言われるんですが、このスープはその5味を全て野菜と果実から出しています。

お肉はふつう温めて食べるものですが、わざと冷やしてます。そうすることで赤牛の甘さがとても感じやすくなるんです。それができるのも、この土佐あかうしに甘みがあるからなんですね。

会長: 私はおいしいものを食べるときは、つい口数が少なくなってしまうのですが、ここまでおいしいと無言になってしまいますね(笑)

東京シティ青果・藤田専務(以下、専務): どんな味になるんだろうと思っていましたが、本当に深みがあって、まさかここまで渾然一体のおいしさになるとは… いろんな素材がただミックスされているのではなく、1つの美味しさに融合している感じですね。

シェフ: これまで私は何度も高知県にお邪魔していますけど、本当に素材の良さは来るたびに痛感します。この料理は赤牛のみサッと表面を炙っていますが、それ以外は皆、生のままです。素材が良いから、そのまま地の良さを引き出しているだけです。

そしてもう1つ、高知県に来たときに感じるのが、作る人の情熱です。それがとても高くて、こちらにも伝わるから、私もインスピレーションをもらえるんです。

会長: 今回シェフには、われわれ生産部会の圃場もご覧いただいて、生産者と直接お話もして頂いているんですよね。

シェフ: 昨日はトマトとナスの生産者を訪ねました。次の一皿が、そのナスを活かした料理になっています。これだけで3種類のナスを使っています。

会長: えっ、これはナスで鶏を巻いているんですか?

シェフ: はい、「米ナス」がとても大きく立派だったので 「はちきん地鶏」を米ナスで巻きました。鶏の中にはトマトのチャツネが入っているので、はちきん地鶏をカットするとソースが出てきます。一緒に召し上がってください。

知事:これまたおいしいですね。はちきん地鶏の味とトマトの酸味、そこにナスの旨味が加わってもの凄く味に深みが出ています。そして、はちきん地鶏がとても柔らかい。

シェフ: はちきん地鶏は焼くのではなく、蒸しています。鶏の歯ごたえを残したまま柔らかくしているんです。

米ナス以外には、「土佐鷹ナス」を炭火でゆっくりと焼いて、 「小ナス」は油でちょっとだけ揚げています。昨日、私は圃場でナスを生のまま食べましたが、このナスのおいしさを出すには、あまり手を加えなくて良いと思いました。それぞれ3者3様の特徴が出ているのではないでしょうか。

知事: こんなに存分に高知の食材を活かしてくださると嬉しいし、誇らしいですね。

シェフ: ぜひ、ナスと鶏を味わった後は、添えてあるトマトも食べてみて下さい。これは「夜須のフルーツトマト」ですが、とても肉厚で味が濃くて、甘みと酸味が際立っています。口直しの役目もはたしてくれます。

実は一昨日、婦人部会の方々が地元ならではの郷土料理をふるまって下さったんです。実に10品以上もあって、どれも本当においしかったです。

でも、同じようには作りたくなかったので、あえて違う形でこの野菜の良さを表現してみようと思いました。

知事:高知県は、ナスでたたきを作ったりして、もの凄くナスを料理に使う県なんですよね。たたきというと一般にはカツオをイメージされると思いますが、ナスのたたきって本当に、それだけで料理のメインになるぐらいおいしいんです。でもこのシェフの料理もまた、新しい発見です。

シェフ: 私ももう日本に来て22年になりますが、こんなにナスやトマトの種類が豊富だとは知りませんでした。昨日訪ねたトマトの圃場では、そこだけで10種類以上の品種を作っていました。 そしてそれぞれが本当においしいから、話を聞きながら1人でもうどれくらい食べたでしょう… 30個は行っていますね(笑)

知事: ふつうこういう料理では、生クリームとかバターとかを足して作るものだと思うんですが、これ本当に野菜と果物、素材だけで作っているんですよね?自分の作った野菜がこんな料理になると知ったら、生産者の皆さんも本当に喜ぶでしょうね。

シェフ: はい、白ワインもミルクも小麦粉も使っていません。唐辛子とオリーブオイル、塩・胡椒だけは加えていますが、先ほどのスープにしても水一滴さえ入れていません。昨日、生産者の皆さんをご招待して、この料理を食べて頂きましたが、とても喜んでくださいました。


会長: 今回は高知の良さを地元の人が語るのではなく、外から来た他者の眼で見て、話を聞こう。課題があれば解決しよう。 そんな狙いがありましたが、まずはズバリとシェフから、ふだん我々では気づかない、活かしきれていなかった高知県の魅力を引き出して頂いたように思います。


知事: 私は就任以来つねづね「地産外商」という言葉を使って、 高知県の進むべき道を説いています。日本全体が少子高齢化、特 に地方都市・村落の人口減少が課題とされていますが、中でも高 知県のようにすでに人口が減っているところは、足元の経済がど うしても縮んでいってしまいます。その分、外へ売ってでて、外から いろんなものを掴みとってくることがとても大切です。

だからこそ「地産外商」ということをずっと訴えて、実際に多くの方 々がチャレンジし、県もバックアップを続けています。ある意味、日 本の課題を先行し、如実に体験しているといえますから、今、ここ で私たちが1つのソリューションを提示できれば、日本全体にとっ てもとても大きな意味があります。

ただ、同時にそれは、ライバルが非常に多いところに参入することも意味します。そのため、他とは違う高知の良さを、分かりやすくかつ多くの方々に知ってもらわなければなりません。今日はこうした形で、やっぱり高知の食材は良いものなんだ、と再確認できたということが1つあります。

そしてもう1つは、こうお伝えすれば多くの方々に伝わるんだなと発見できたことが大きな収穫です。「地産外商」にとってこういう素晴らしいお料理は、強力な武器になります。

会長: 私たち生産サイドにいる者としては、「高知のエコ野菜」ということで、化学合成農薬の使用を制限し、自生する益虫を活かした天敵栽培を奨励する独自のガイドライン「高知GAP」を策定し、「環境保全型農業」を実践しています。

この取り組みは、全国どの自治体にも負けない先進的なものと自負していますが、この「安心・安全な高知やさい」を、先ほどシェフが仰ってくださったように情熱的な生産者が一生懸命つくっています。

今日は、いわばそうした「農の匠」たちの食材を「料理の匠」であるコルビシェフが、見事に演出してくだったことに生産者を代表して御礼をいいたいし、また今後もそうした良いものを、期待に応えて作り続けていかなければいけないとあらためて思いました。

専務: 私も今日、お料理をいただき、皆さんとお話しする中であらためて高知の食材の素晴らしさを実感しました。野菜を持つ力が、この味を生んでいるといって過言ではないと思います。そんな中、私たちは東京における高知県の窓口として、いかにこの魅力を首都圏の消費者に伝えていくか。ここに挑まねばなりません。

今は、商品が非常に多様化しています。それはすなわち、流通販路も多様化しているということです。その販路1つ1つに適した情報を、いかにタイムリーにお伝えするか。そこが1番の課題だろうと思います。

流通として以前の市場は、荷物をいただき、それを販売することが仕事だったかもしれません。でも今は、情報を付加して商品そのもののブランド力を高めて提供する。それが私どもの役目になります。なかでも高知の食材は、とにかく素材がしっかりしていますから、責任をもって販路に結びつけていきたいと思います。

シェフ:私も今回の旅で、ぜひ自分のお店でも使いたいと思う食材にたくさん出会いました。これを私の料理を食べる人だけではなく、料理をする仲間たちにも伝えたいですね。

専務: 今回、私たちは、「ALL 築地!」を掲げ、卸・仲卸はもちろん取引先の量販店・スーパー、中外食、コンビニ、インターネット通販など、業種・業態の垣根を越えて高知県をバックアップしようと取り組みました。 折しも来年11月には、築地から豊洲新市場へ移転となります。そんな時代の流れをしっかりつかみ、新市場の機能をいかしつつ、従来の業態にとらわれない新たなビジネスモデルを構築する。

その最中に、高知県さんとこのような取り組みをご一緒させていただくことができ、各取引業者さんは本当に何を必要としているのか。的確な情報をいかに伝えれば良いのか。その点をあらためて見つめ直すきっかけにもなりました。

その具体的な成果としては、各業界の現場において、実際の消費者さんと接点のある方々の声を産地・生産者の皆さんに返していく。そこから新たな商品づくり、規格の見直しを行っていく。そんな取り組みに着手して、今後さらに園芸連さんと連携しおし進めようとしているところです。

会長: 適切な情報をしっかりお伝えしていくのは、私たち産地側の問題でもあります。折角ものづくりに励んでも、それを正確に伝え、広めていく術を改善しないと、認知・浸透するには至りません。ぜひ、ひき続きのご協力をお願いします。

知事: 今の時代、商品を外に持っていって売るということには、2つの難しさがあります。
1つは先に申しましたとおり、競争が激しいということ。そしてもう1つは、費用や手間、ネットワークの部分です。

大企業なら自前で全て行うこともできるでしょう。しかし、中小零細企業の皆さんには、遠くに持っていって売るというのは、それだけ人もお金も かかる大変なことです。だからこそ、「官民共同」で、個別企業には負担が大きいところを官が補うかたちで連携していくことが、とても重要に なります。「東京に売り込むぞ!」というときに、「さぁ行って来い!あとは官から民だ…」といってもそうはいかないわけです。

その象徴として、「地産外商公社」の取り組みなどもあります。ここの専属スタッフが県民の皆さんが県外へ売り込みをかける場を構える。さらには商品のプロモーションの場を準備する。そういう機会を生産者の皆さんに使っていただくことで、比較的、垣根を低くして「地産外商」を進めていく後押しをさせて頂いています。

実際に公社がお手伝いして成約した件数も、平成21年度は178件でしたが、直近25年度には3333件まで伸び、そして26年度はさらにそこから3割増ほどする見込みです。 着実に伸びてきました。でもまだまだです。これから先もう一段、地産外商を大きくしていかなければいけない。

そんなとき、各分野のプロの皆さんを味方に付けていく。特に東京にいらっしゃる方、大阪にいらっしゃる方、県外にいらっしゃる方々で、 私たちとぜひ、地産外商をタイアップして一緒にやっていこうという方。そうしたプロの皆さんを出来るだけ多く味方につけていく。 それがとても重要になってきます。

今回は、東京シティ青果さんに本当に大きなサポートを頂きました。また、コルビシェフにも大変心強い援軍に加わって頂きました。心から感謝いたします。


知事: 私たちは、何を伝えるのか。そしてどのように伝えるのか。 何をというのは、私たちはこの高知の良さを伝えていきます。 でも、どのようにというとき。それはそれぞれ相手先によって変わってくるものです。工夫をしなければいけない。

県産品が「素晴らしいんだから」とそのまま出しても、それだけですぐ受け入れられるわけではない。 今日はコルビシェフに「こうしたら素材の良さがひき立つんだよ」と教えて頂きました。私たちもきちんと戦略を練って、磨き上げて投入しないと 「地産外商」はかけ声で終わってしまう。その仕組みを県ぐるみでしっかり回していくことが重要だと思います。

ぜひ、「ALL高知」、そして「ALL高知」+「仲間!」でこの取り組みをさらに進めていきたいと思います。 今日は本当にありがとうございました。ひき続きよろしくお願い致します!